2006年02月04日

I'm here(アイム ヒア) 001

細く透明な糸が風に流されるように、ゆっくりと漂ってきた。
ふいに糸につけられた赤い目印がつつっと横に走る。
間髪いれず、手にした竿をしゃくりあげると、キラリと銀色の光が宙を踊った。
私は竿を立て、掛かった獲物を静かにたぐり寄せた。

足音がした方を見ると少年が眩しそうな瞳を一瞬そらそうとして、思いとどまった。
少年が先ほどからこちらを窺っていたのは知っていた。
知っていたが、放っておいたのだ。
「なんだね」
私はつとめて、優しい声で訊ねた。




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「あ、いえ……」
少年は言いよどんだ。
「何て言う魚なのかなと思って」
「ヤマメだよ」
「食べられるんですか」
私は少々呆れた。
「塩焼きにすると旨いよ。本来はキレイな川にしか住まないんだ。清流の女王と呼ぶ人もいるがね」
少年は私の言葉をかみ締めるように頷くと周りを見回した。
気持ちは分かる。
河川は自治やボランティア団体が清掃事業に力を入れているとは言え、ゴミが浮かんでいる。
「少し上の方で放流しているのさ。天然ものじゃあない」
少年は小さくうなずいた。
「放流日も決まっているんだ。今日は上出来だ。これで4匹目だよ」
少年は答えなかった。魚のことなどどうでも良かったに違いない。
カレは私に用があって来たとしか思えなかった。

私は迷った末に声をかけた。
「一緒に食うか。来るかね」
私は粗末な小屋を指した。
少年は小さく震えた。
わずかに足を取って返そうとしたのが見てとれた。
しかし少年は意を決したように私をじっと見つめた。
そして小さく「はい」と言った。

少年が迷い、臆するのも無理はない。
なんせ物騒な世の中である。
利発そうな少年だが、賢い少年は見ず知らずの大人に声をかけてはいけない。
ましてや、知らない大人の家にいくなどもってのほかである。
だが、たとえ少年でなく大人であったとしても私の招きに応じる人間は少ないだろう。
なぜなら、私は「ホームレス」と呼ばれる人間なのだから。

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その一方で、さっきまでの落ち込みがウソのように元気になって、立ち直れることがありますよね。
人は、どんなきっかけで元気になれるのでしょうか。
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