2006年02月20日

I'm here(アイム ヒア)006

不意の夕立が上がったあとに龍治はやってきた。
河原に生える雑草を踏みしめ、クツを泥だらけにしながら。
私は夕立をやりすごしたあと、夕飯を調達するために馴染みの小料理屋へ行こうかどうか思案していたところだった。
小料理屋と言っても客として行くワケではない。食品リサイクル屋として裏口から訪ねるのだ。
昔の知り合いが板前として働いていた。彼が客に出した天ぷらなどの残りものを詰めてくれるのだ。
ありがたい配慮だが、毎日物乞いするのも、曇りきったプライドが邪魔をする。
だが、あいにく今日の夕飯は他にあてがなかった。

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龍治はこの前のように、こちらを窺うように、少し離れたところで立ち止まった。私が彼に気づくとようやく近づいてきた。
龍治の表情に明るさはない。
さては、指輪の犯人は私の推測が外れたか。
「おじさん」
「なんだね」
私はイタズラを見つかった少年のようにバツが悪かった。
「おじさんの言うようにしたよ。犯人が分かったんだ」
「ほう」
私はすぐに立ち直った。
現金なものである。
だが私はつとめて平静を装った。
「彼女は……。彼女は自分で指輪を傷つけたんだ」
「そうか」
「ボクが教室に行く前に彼女はいたんだ」
「……」
彼女は、ペンケースに入れた指輪を持ち歩いていた。
そして運悪くつまづくかどうかして、転んだのだろう。
転んだはずみで、中に入れていた指輪が傷ついたのだ。
リボンの帯の部分はペンケースの内側に突き刺さった状態で残っていたと言う。
私にはいくつか不審な点があったが、それは口に出さなかった。

「おじさん、ありがとう」
「ああ」
私は急にタバコが吸いたくなった。
懐かしい衝動だった。
微かに鼓動が高鳴る。
私は昔のことだと、自分に言い聞かせた。

「実は、お願いがあって来たんです」
「なんだね」
「助けて欲しいんです」
そらきた。私は龍治を見つめた。

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私たちは、日常のちょっとしたことが原因で、落ち込んだり悲しくなったりします。
その一方で、さっきまでの落ち込みがウソのように元気になって、立ち直れることがありますよね。
人は、どんなきっかけで元気になれるのでしょうか。
普段、気にもとめないような「元気のみなもと」を追求していけば、元気になれそうな気がしませんか。

元気になるには、人それぞれのコツがあるのです。
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