2006年05月01日

I'm here(アイム ヒア)017

多摩署はユニバーサルデザインされた明るい建物だった。
受付も事務所というよりはオフィスと言う雰囲気に近い。
私は刑事課の隣にある応接室に通された。
鉄格子のある取調室ではなかった。
もとより犯罪者ではないのだ。
だが、この待遇には何かありそうだった。
私の鼓動が高鳴った。
ヒアリングの内容を書き取る女性警察官がドア付近に腰掛けた。
私は長く伸びた不精ヒゲを、落ち着きなくボリボリと掻きながら成り行きを見守った。
騒々しい足音とせわしいノックをして入ってきたのは、30代前半の精悍な風貌の若者だった。
刑事として脂がのっている年齢である。
私は彼の顔に見覚えがあった。
「お久しぶりです。桐生さん」


確かに名字で呼ばれるのは久しぶりだった。
「どこまでご存知なんです」
単刀直入だった。
確か矢崎と言う名前だったはずだ。
「私は俗世間を捨てた人間だ。知っていることは少ない」
「その少ない部分をお聞かせ頂きたいのです」
「ホームレスデビューの経緯でもお聞かせしようか」
「その辺も聞かせて頂くことになります」
動悸が早くなりだした。
「聴取に立ち会うのは君一人かね」
「デカ長、班長も取りこんでいましてね。私では役不足ですか」
矢崎は首をすくめて見せた。
私に関心を持つものはいないと言うことだ。
「いや、そうではない。だが、ひとつ聞いておきたい」
「何でも」
「これは、職質かねそれとも何かの参考人聴取かね」
「どちらでもありません。客人としてご意見をお伺いしたいだけです。私一個人としての興味です」
現職警察官の家宅捜索をあれだけ大々的にやったのだ。
本庁からも人間が来ている。
興味云々と言っているほどヒマではないはずだ。
私は一連の関係者の枠の外の人間と認識されているが、放置するワケにもいかない、と言うのが本当のところだろう。
捜査本部長了承の元のヒアリングと見るべきだった。
私はまたタバコを吸いたくなる衝動にかられた。




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